書名 魅力の御伽草子
シリーズ名
著者 石川透編
本体価格 2800円
ISBN4-8382- 3079-6
発行年月 平成12年3月
判形・製本 A5判・並製
在庫情報
室町から江戸時代前期まで広く流行し、様々なストーリーを展開した御伽草子。物語、書誌、歌、説話、絵というそれぞれの観点から第一級の研究者が、その魅力をあますところなく語る。巻末に御伽草子100点の書誌・内容・作品の特色等を示した解説を掲載。幅広く御伽草子の魅力に触れる必携書。
【目次】
住吉物語の魅力(三角洋一)
御伽草子の版本について(関場武)
「弁慶物語」と聖クリストフォルス伝―東西中世の巨人伝説―(徳田和夫)
すけくに・サコク・ソコク─『佐國物語』小攷―(徳江元正)
奈良絵本・絵巻の制作(石川透)
物語の成長(石川透)
慶応義塾大学図書館蔵 御伽草子解題
至れり尽くせりの本    白百合女子大学教授 久保田淳
無類におもしろくてしかもためになる、至れり尽くせりの本である。本書は2000年1月、丸善日本橋店で行われた慶応義塾図書館蔵御伽草子展の際に催された、三角洋一・関場武・徳田和夫・徳江元正・石川透の五氏による講演の記録と、編者石川透氏のラジオ放送を活字に起こしたものである。それぞれの講師の語り口がそのまま再現されていて、じつに読みやすく、しかも高度に専門的なことがわかりやすく説かれている。同業者には講演のしかたについての見本としても役立つであろう。巻頭のカラー写真をはじめ、図版も豊富で、終わりには展示図録解題も付されている。中世文学・物語文学研究者はもとより、世の本好き、本の虫を自称する人々に広くこの一本を勧めたい。
『魅力の御伽草子』のすすめ    文教大学教授 田口和夫
慶應義塾図書館が所謂御伽草子の善本を多数蔵していることは周知のことだが、その展示会とこれに関連する連続講演会が2000年1月に行われている。講演というものは一期一会、興味があっても都合がつかなければ、残念!で終わってしまう。この書はその講演の記録を中心とし、展示図録の解題を併載しているので、講演会に参加している気分で読める。三角洋一氏は住吉物語を読む。指摘される問題点はそのまま御伽草子に通底する。関場武氏は御伽草子の特色、版本の挿し絵を比較して説く。徳田和夫氏は芥川龍之介が「きりしとほろ上人伝」で取り上げた聖クリストフォルスの物語と弁慶物語とを対比する。徳江元正氏は胡蝶物語の「さこく」を尋ねて注釈・説話・芸能に分け入る。石川透氏は奈良絵本・絵巻の制作現場、工房とその作者を明らかにするとともに、物語が書写という作業とともに変化・成長を遂げる現象を確認する。それぞれの講演者は易しい口跡で語っているが、語られる内容はすでに論文として論じられていたことの関連・発展であって、納得させられる。それぞれの視点の論が一書にまとまられることによって、御伽草子の豊穣な世界の一端が明らかになり、今後の研究動向への示唆が得られたと言えよう。付載される百点の御伽草子解題は特色欄がことに有益である。



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